GECKA_INTERLUNA_WORKS
NOVELS

モーニング・トリップ
 朝、目を醒ます。
 いつもより少し早い時間。
 いつもよりちょっと、余裕あり。
 爽やかな鳥の声。カーテンを透かす日の光。
 ”んーっ”と伸びをして、カーテンを開けるためにベッドから降りて立ちあがる。

 瞬間。

 めまいがした。

 ”くるっ”と目の前の世界がまわる。
 頭の中の脳みそが全部抜けちゃったみたい。
 世界はまだまわってる。頭は風船みたいに軽い。

 あ。

 あぁ、あぁぁー…。

 あぁあぁぁ…。

 あはぁ…。

 ”ぱさっ”と、いい肌ざわり。
 ベッドの上に倒れこんだらしい。

 あぁ、あぁ……、きもちいい……。

 ベッド、こんなにやわらかかったっけ…?
 頬で、手のひらで、なでるシーツの肌ざわり。

 あぁ、とてもきもちいい…。

 着ているパジャマの感触も、なんだかあったかくて、やわらい。

 あはぁぁぁ……、気持ちー……、良いなぁー…。

 シーツの上でゆっくり泳ぎ回ってる手のひらが、また何かやわらかいものにふれる。

 あ。まくら。

 今度はそのまくらを両手で胸元に引き寄せる。
 そして”ぎゅっ”と抱きしめる。
 体を”きゅっ”と縮めて、まくらの肌ざわりを頬で堪能する。

 はぁー…。

 きもちいぃー……。

 そのまま”ごろん”と仰向けになる。
 ”ぎゅっ”と抱きしめたまくらはとてもきもちいい。

 あぁ、幸せぇ…。

 そんな感じで、ぼやけた頭の中。
 なんだか…、別の世界に来たみたい…。


 ぼやけた頭、ぼやけた視界。

 ぼやけた視界。

 そんな、ぼやけた視界に何かぼやけたものが入ってくる。

 それは赤く見える。
 それは四角く見える。
 それは音を刻んでいる。

 あ、時計。

 あぁ、時計。目覚まし時計。

 目覚まし時計だなぁ…。

 まくらを抱きながら、しばらく目覚まし時計とにらめっこをする。
 細い針が、ここちいい音を刻みながら文字盤をまわる。

 あぁ、回ってるなぁ…。

 その音と動きをみていると…、また眠くなってくる。

 あぁ、眠いなぁー…。

 ね……。

 む……。


 で、次の瞬間。


 目覚まし時計が鳴った。おなじみの甲高い電子音で。

 あ。

 ”はっ”と、急に頭の中がはっきりした。
 抱いていた枕を”ぱっ”と離して飛び起きた。

 いつも通りの時間。
 いつもどおり、余裕はない。

 爽やかな鳥の声が無情なほどに朝を告げ、カーテンは日の光に透けていた。

 ”んーっ”と伸びをして、ベッドから立ち上がり窓際へとぼとぼと歩いた。
 眠いよ眠いよ頭が重いぃー…。
 カーテンを開ける。日の光が、まぶしい。
 ちょっとだけ、”すっ”とする。

「目覚まし時計、もうちょっと早くセットするのもありだなぁ」

 日の光に目を細めて、そんなことを呟いた。
 いつもどおりの、低血圧の朝だった。


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